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最初に「MC松島の1stアルバムが出ます」と言われた時にちょっと耳を疑った。「2017年は毎月1枚アルバムサイズの音源を出す」と言いながら、むちゃくちゃなリリースラッシュをしていたのだ。全国流通になった「She's a hero」とかはアルバムじゃなかったのかとか、いろいろ言いたいことはあるが、本人いわく「これが1stアルバム」なのだ。そもそもこのタイミングでの「1stアルバム」ということ自体が人を食った話である。

楽曲のタイトルを見てらしいなと思う反面頭を抱えた。なんだよ「ビッグちんちん」とか。結局このアルバムも今までのミクステ群と同じような感じなんかな…とちょっとひねくれた感情になってからこのアルバムを聴き始めた。一周。二周。三回目のリピートのタイミングでようやく確信した。なるほど「これは間違いなくMC松島の1stアルバムだ」ということを。

思えばここ最近のミクステ制作などでのMC松島のテーマというか行動は一貫していた。MC松島にとってテーマがオリンピックであろうがヒップホップ警察であろうが夏だろうが鳥だろうが何でもよく、「そこに素材があったから料理してやった」というもんなのだ。そのテーマやリリースへの時間などの限定条件が強ければ強いほど、(当人にとって)面白い「遊び」だったのではないか。このミクステ群でMC松島のやっていたことは、絵を描く前に大量のスケッチや習作を作っていたようなものなのでは無いかな、と個人的には思っている。

さらにMC松島と言う人は非常に「受け身上手」のMCだと思っている。相手が強いと、それの力をうまく使って勝負を盛り上げていくタイプ。バトルなどの時にもそうなのだが、相手の攻撃をわざと受けたり受け流したりしながら勝負を組み立てていく印象がある。自分をさらけ出して攻撃をするのではなく。ラップというアートフォームの中でこう来たらこう、という合気道のようなことをずっと繰り返してきたのもMC松島だ。

この数年、MC松島は「あらゆるものを俺の中で消化してやろう、そして俺流にしてしまおう」ということをやってきたのだと思う。

しかしこのリリースラッシュの中で、ちょっとMC松島の毛色が違っていたのはRefugee Campのアルバムだった。そして今回のこのアルバムを紐解くうえで重要なのは、トラックメーカーとしてRefugee Campでも共に活動する盟友、Jazadocumentのみを起用したという事実で、MC松島はようやくこのアルバムで「遊び」ではなく、アーティストとして己の表現を展開していくことになる。このアルバムは「近年流行のフロウ」や「近年流行のトラック」などで薄めることをせず、一貫して札幌でラップを続けてきたMC松島の集大成を見せてくれる。韻の踏み方やフロウの組み立て方や、過去の楽曲の引用など、ここ最近の作品群ではあまり表に出してなかった「スキル」の部分も存分に見せつける。

札幌でもう10年以上ラップを続けているMC松島。本人は「絶対がんばらない」と良く言っているが、誰よりも「がんばらないことをがんばっている」男であり、「これは趣味です」と言いながらも、プロが舌を巻く日本最強のアマチュアであり続けている。「自由に思うがままにラップする」ために大量の作品を通して「自由に思うがままにラップをする方法」を誰よりも作品という形で研究している。

このアルバムは、コンセプトアルバムなどではなく、札幌に生まれたラップヘッズがむちゃくちゃストレートな「カッコいいビートにカッコいいラップを」という思いを重ねた先に生まれた自叙伝のようなアルバム。断片的なイメージにとどまっていた「MC松島」の実像を探検するような作品だ。MC松島が作った作品というより、この作品自体がMC松島。100%のMC松島を堪能できる。ヒップホップと札幌と自由を愛し続けたMC松島という男が作ったこのアルバム。背景、内容含めてむちゃくちゃ純度の高いヒップホップだ。

そしてそれを聴く我々は、この作品を通してMC松島という人間の"HOSPES(旅人・客・宿主)"になる。今まで「君の友達」と我々に呼び掛け続けたMC松島。我々はこの作品を通して、MC松島とようやく本当に「友達」になるのだろう…なんてことを思いました。

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