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ーーMC松島さんの記念すべきデビュー作『hospes』の オフィシャル・インタビューということなんですけど、このインタビューはMC松島というわかりにくいラッパーを『hospes』を踏まえながら大解剖というコンセプトにしようかなと思うんですよ。そうしたほうが『hospes』がどういう作品なのかもグッとわかりやすくなると思うので。なのでまずは松島君に強い影響を与えたアルバムを10枚くらい挙げてもらっていいですか?

 

ハービー・ハンコック『フューチャー・ショック』

トーキング・ヘッズ『ストップ・メイキング・センス』

ジプシー・キングス『ジプシーキングス』

50セント『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』

ワカ・フロッカ・フレイム『フロッカヴェリ』

EAST END『Beginning of The END』

KICK THE CAN CREW『VITALIZER』

RHYMESTER『ウワサの真相』

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』

スチャダラパー『WILD FANCY ALLIANCE』

 

 80年代前半に出てるようなのは幼児の頃に父の趣味で聴かされていました。その時の音楽体験が一番影響が大きいと思います。父はとても変わっていて、お陰で僕もこんな風になりました。父にアニソンを聴くのを禁止されていて、母と一緒に隠れて「まじかる☆タルるートくん」をカセットにダビングして聴いてました。家庭内海賊盤です。父にも母にもとても感謝してます。00年代に出たものなどは、青春時代に良く聴いていたものっていう感じです。うちはケーブルテレビに加入しててMTVとかスペシャも良く見てました。どっちが良いとかではなく、youtubeで見るのとは全然違うと思いますね。CDを買っていた最後の世代とも言えると思います。

ーーハービー・ハンコック、トーキングヘッズ、ジプシー・キングスの並びはお父さんの影響ですよね。お父さんはどんな音楽が好きだったんですか?

きっとその年代の俗に言う普通の洋楽ファンだと思います。クラプトンとか好きな普通のおじさんです。でも独特の美意識を持っていて「JBよりオーティス・レディングを聴け!」とか「グランジは聴くな!」とか中学生のころとかも言われたりしてて笑。

 

 

ーーFUNKY GRAMMAR UNIT周辺やスチャダラパーはわかるんですけど、ニトロがここに来るのはけっこう意外ですね。
 

純粋にすげー流行ってたし、めちゃくちゃカッコいいと思うんですよ。当時はファッション雑誌を開けばニトロのメンバーさんが絶対に載っているような状況でした。日本のヒップホップを初めて聴く人に僕が最初に勧めるのがニトロの1stです。

 

 

ーー僕は松島くんと同い年なので、50セント『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』がここにあるのはとてもよくわかります。僕らがちょうど高校生になるくらいの2002~2003年ってエミネムが『ザ・エミネム・ショウ』~『8 Mile』でキャリアの絶頂期みたいな頃で、50セントはそんなエミネムとドレーが太鼓判押した大型新人って感じでとにかく盛り上がってましたよね。この辺りをとっかかりにしてヒップホップにどっぷりいった人たちは多かったですよね。

50セントの1stも完璧だと思います。僕が一番聴いたアメリカのヒップホップだと思います。すごいファンキーだし今でもアガりますね。「In Da Club」は世界のヒップホップのなかでもベストなトラックの一つだと思ってます。50セント自体もムキムキだしワルなんだけど、どこか愛嬌を感じるのも高ポイントですね。

 

ーーワカ・フロッカ・フレイム『フロッカヴェリ』をチョイスしたのは面白いですね。個人的にこのアルバムはトラップを推し進めた808 MafiaのLex Lugerの出世作という印象があります。彼のトラックが最高なんですよね。

僕はずっとニューヨークのhiphopが好きで、ピート・ロックとかプレミアが一番かっけー!みたいな子だったんです。新譜自体ちゃらちゃらしてると思ってたし、リル・ウェインとか半ば見下していました。中二病ですよね。そういう考えを打ち壊してくれたのがこの一枚なんです。当時大流行してたサウスにハマるきっかけになった一枚でした。ワカ・フロッカが居なかったら未だにそういう考え方だったかもしれません。今は新譜を追うのが楽しいです。

 

ーーこれ、記念すべきデビュー作の質問としてふさわしくないかもしれないんですけど(笑)、松島くんはいわゆる日本語ヒップホップというよりむしろ、ラップというフォーマットで色々やりたい人―例えばヒップホップ・ミュージカルとか、演劇にヒップホップを取り入れるとか―だと僕は思ってるんですよね。松島君のMVとか観てると、そういう越境性を感じるんですよ。そういう認識についてはどう思いますか?

 

 仰る通りです。ラップも話芸だと思ってるんで、ラップをヒップホップ専用の技術として限定する必要はないと思います。言葉や声を扱うっていう意味ではラップ以外のフォーマットにもどんどん挑戦していきたいです。最近お笑いとか演劇の人と関わらせてもらうことが増えてきて、その人たちは僕のことをラップの専門家として重宝してくれるんですけど、彼らが実際にやってるパフォーマンスは日本のヒップホップなんかより遥かにレベルが高かったりする。そういう中で、僕はラップの専門家として、そういう言葉や声を扱うプロの人達と対等に渡り合うにはどうすればいいのかなって模索もしてます。そういうことを言うと誤解されるだろうから、これは強めに言っておきたいですが、あらゆる観点から見てもその辺のただパーカー着てる奴より断然僕の方がhiphopだと自負してます。

 

 

ーー実際、今なにかラップを使ってやってみたいことってあります?

 

コントもミュージカルもやってみたいし、ジャパネットタカタみたいなこともやってみたいです。ラップというかラップをやって身につけた文章の技術という方が近いかもしれません。ラップってやるのが難しくて高尚なカルチャーなんだっていう見せ方は僕は嫌いです。免許も教育もなくても誰でも出来るやり方です。誰でも出来る物だからこそ、普通の人には出来ないものを出すのがプロですから。自分のギャラが下がるのが怖くてラップの可能性を狭めるようなことはしたくないです。退屈です。

 

 

ーー松島君は、ラッパーだけじゃなく漫画書いたり、監督もやったりしてるらしいですよね。僕も含め、ラッパーとしての松島君を知ってる人でも、そのへんの活動について知らない人はけっこういると思うんですよ。ここでクリアにしてくれると色々と伝わりやすいと思うのですが、いかがでしょうか。

漫画は札幌のフリーペーパーに連載していたことがあって、映画は短編映画祭に一本エントリーしたことがあるんです。しかし、いつかこの日が来ると思ってたんで白状しますね!どっちも進行形ではほぼやってないです。99%ラッパーです。だけど、ラッパーも漫画家も映画監督もインディペンデントな人って言ってしまえば皆自称だと思います。やろうとしてるのは全部本当です。実際は連載してた漫画も四コマだし、短編映画もほぼコントなんですけど。僕は所謂「俺にはマイク一本しかねえ!」みたいなのって嘘くさいなと思うし苦手なんです。僕はそうじゃないですよっていうスタンスをアピールしたいです。そして名刺に「文筆家」っていう肩書きを載せてるんですけど、それで本当に文章の依頼がきたことあって(笑)。世の中そういうものじゃないですか!肩書き載せておけばオファーがくるかもしれない。漫画の仕事も映画の仕事も依頼が来たら全力でやらせて頂きますよ!

 

 ーーどんなジャンルでもいいんですけど、今コラボレーションしたい人って誰かいます?

 

言うと叶わなそうな気がしますが、ミュージシャンは沢山いますね。ちなみに筆頭は玉置浩二さんです。他のクリエイターも色々居ると思いますが、基本的には友達と作るのが好きだし、何かしたい人とはまず友達になりたいなと思います。今友達になりたいのは漫☆画太郎先生です。

 

ーー異様なほどハイペースに曲作って配信してますよね?しかもその内容はそれぞれでバラバラなネタで。ああいうやり方をするようになったのはどうしてでしょう?

 

大前提として、ラップ曲なら最低限の文化的な生活をしていたら一日に一曲くらい作れると思うんです。曲を早く沢山作るというよりは、最低限の文化的な生活をキープする方を大事にしています。その日の気分で曲を作るとどうしてもバラバラにはなります。去年は色んなトラックメイカーさんとも一緒にやってみたかったし、バリエーションは出そうと思っていたので余計にバラバラになりました。あとは作るのが楽しくて楽しくて仕方がないです。しかも、やればやるほど新しい発見が出て来るんで、一生作り続けたいです。あとはピカソの影響が実はあるんです…(笑)それとマネージャーにめちゃくちゃ急がされた時期があって自然とコツを掴んだりとか笑

 

 

ーーピカソの影響って具体的に言えばどういうところですか?

 

多作なのって天才っぽくてかっこいいなっていうのはありますね(笑)多作であることがクリエイティヴィティと密接に結びついてるっていう感じがあって。あとは、体験として、僕が子供のころにピカソの絵が札幌に来た事があって観に行ったんです。そしたらすごい行列で、でも置いてるものはメモとかデッサンみたいな物が殆どだったんですよ。ピカソは生涯で14万7800点の作品を残したらしいですけど、そういうメモとかデッサンみたいなものも作数にカウントされてるらしかった。だから逆に、やばい作家として認められれば、そいういうメモみたいなものもみんなありがたがってくれるんだなと思いました。なのでデッサンとか習作みたいなタイプの曲も積極的に公開してます。あとは僕が死んだあとにでも学者の人に研究されたいですね。研究しがいがある活動を生前は心がけていきたい笑

 

ーーそういった配信の中で、半ば茶化しながら今っ「ぽい」フロウを取り入れたりしてますよね。実際、向こうのヒップホップもけっこう聴いたりするんでしょうか。去年好きだったアルバムをいくつか教えてもらえたら嬉しいです。

 

世界中の音楽を年代問わずに極力聴く様にしてます!こんなに安く多く音楽を聴けるなんて現代の特権だと思うし、そうしないともったいない!ただ、USの今っていうと厳密には全然追えてないです。ケンドリックとかJコールとか普通に好きですが、もっと若いラッパーはしっくり来ない場合もあります。僕はガッチガチの最先端の音楽のよさって多分リアルタイムでは理解できないんです。なので理解出来る範囲の、数年前の物とかをパクってます。パクるというと聞こえが悪いけど、パクリ0のアートなんてあり得ない。かっこつけて言えばインスパイアでしょうか。誤解を恐れずに言うと、日本の音楽なんてほぼアメリカのパクリでしょう。

ちなみに去年で言うと、スレイヤーっていうアメリカの80年代のスラッシュメタルバンドにハマりました。重いギターとかダッサって思って苦手だったんですけど、一度ピンときちゃうと抜けれなくて、今はヒップホップとか遅ッと思って来てます。

 

ーースレイヤーとはまた、実も蓋もないですね(笑)松島君は例えば誰のことをパクったりしてますか?

 

パクる能力がそんなに高くないので恥ずかしいですが、

MC松島 - She’s a hero

これは、

Rae Sremmurd - Start A Party

とかです。他にあらゆる要素が混ざっています。

ちなみにスレイヤーもパクろうと思ってます!パクるというと誤解されそうなので説明しますが、メロディやリリックなどをそっくり頂くという話ではもちろん無いです。僕の言うパクリというのは、考え方や精神性などに影響を与えられるという感じ。オリジナリティだって結局はパクリの組み合わせでしかないと思っています。僕も良く個性的だねとか松島らしいねって言われるし嬉しいんですが、ぼくの個性というのも、音楽の歴史の積み重ねがあって、それらから僕の趣味で影響を受けてきた集大成なんです。要は全部パクりです。ただ、僕にしか出来ないパクり方をしているはずだし、今後もっとそうしていきたいですね。だれもやってないパクり方や、その組み合わせをするとパイオニアになれる。

 

 ーーフリースタイルについて少し聴きたいんだけど、ちょっと前の『フリースタイルダンジョン』の輪入道戦を観ても、松島くんは勝てたらいいなとは思っているだろうけど、勝とうとは思ってないじゃない?もちろん変遷はあると思うんだけど、どうしてそういうスタイルにしたの?

 

本当はめっちゃ勝ちたいですよ!でも勝敗以上の価値を失うとラップのバトルは絶対駄目になると思ってます。強くて正しいスタイルの人ばかりになってしまう。例えば一回戦敗退でも印象に残れば人気になれるよ!っていう前例に僕はなりたいです。じゃないと本当にただのスポーツになってしまう。なので、勝ち易いスタイルとは遠くても僕の試合が好きだと思ってくれる人が居れば嬉しいですね。それで人気になると、今度は僕のスタイルが勝ち易くなってくるわけです。その時日本一になればいいかなって思います。先は長そうです…(笑)ちなみに、2023年頃に一回勝負できるかなと見ています。

 

 

 

アルバム編

 

ーードレイクがアルバムのことをプレイリストって言ったのが象徴的ですが、いまの時代ってSpotify等のサブスクリプション・サービスの台頭によってアルバムという概念が希薄になってきてるようにも見えるじゃないですか?というか、そういう状況認識は普通にある。そんな中、この作品って明確にアルバムとして聴かれることを望んでいるように思えるんですよ。10曲しかないし、トラックメイカーはJAZADOCUMENTだけです。すごく統一感がある。どうしてこうなったのでしょう?

 

ドレイクとかって単に音楽の消費の仕方っていうよりももっと規模の大きいビジネスの話だと思うんですよ。そうなるとヒット曲が出る事が大前提だと思うんです。僕も勿論ヒット曲は出したいですが、とにかく自分のことを表現したい。そうなるとヒットするしない以前に一曲じゃ全然足りないですね。その点アルバムなんて最高じゃないですか、聴く順番さえこっちで決めれるなんて本当に最高です。普通は順番通りに再生しますからね。リスナーはなるべく拘束したいという思いもあります。

 

 

ーーとはいえ、メッセージや音楽性における物語を伝達する「アルバム」というフォーマットはなかなか難しい部分も出てきていると思うんですよ。そこで松島君の実感(友達やファンと接していて感じたこと)を聞きたいんですけど、日本におけるヒップホップのファンはまだそういうアルバム一枚で一つのストーリーみたいなものを求めているように感じますか?

 

 多数の人は求めてないかもしれませんね。今はとにかく皆忙しいですからね。一曲でアガれるみたいな方が需要はあるかもしれません。でも、アルバム単位でこそ出来る表現ってあると思うし、せっかくのアルバムなので、それをやりたいと思いました。きっと時代錯誤だし、リスナーが求めてる物とは違うかもしれない。でも『hospes』で少しでもそういう状況を変えれたら良いなと思います。もしかしたら、アルバム単位で聴くのも悪くないんだなって初体験をさせられたら最高です。皆忙しいのは分かりますが、僕に時間を使って欲しいし、何かを犠牲にして欲しいとさえ思います。申し訳ないですけど(笑)

 

ーー本作の松島君のリリックはいつも通りユーモアもありつつ、けっこうシリアスな響きがありますよね。これはやっぱりコンセプチュアルなもの?

 

 『hospes』には「名盤」という裏コンセプトが有るんですよ。ソロMCのデビュー作で名盤になるものの内容ってこういう感じじゃないかな?と思ったことをやりました。あと、本当はリスナーのみんなに伝えたい事が山程あるんです。だけどそれを言いまくるだけじゃただの説教になっちゃうし、僕も気持ちがよくない。遠目にみたらユーモアだけど、よく考えるとすごいシリアスじゃん?っていうバランスが理想的かなって思うんです。家族で聴けるようだと本当に最高ですね。子どもたちは意味もわからずキャッキャとして、親の魂は揺さぶるみたいな…笑。メッセージを伝える手段として以外でも、歌詞は階層が多いほうがラップとして面白いとも思います。技術がついて来たらもっと多重構造にしたいですね。

ーー松島君に「伝えたいことがある」っていうのは本作を聴けば確実に伝わると思います。いつものユーモラスでバラエティ豊かな松島君を求めている人は、本作を聴いたときに結構ビックリしたと思うんですよね。冗談ばっかり言ってた人が、二人っきりになった途端にいきなりシリアスにマジレスしてきたみたいな(笑)でもシリアスと言っても、この作品には具体的な事象についてはあまり言及はしてないですよね。というか本作にはヒップホップの武器の一つと言ってもいい具体性があまりない。ある意味で時代のアンビエンスをくみ取るような普遍性のある言葉選びをしてるように思えます。【おれ達は最高】や【マンハッタン変事】なんてまさにそうで。これはどうしてでしょうか?

 

すごい!本当に良く聴いてくれてるんだなと思いました!うれしい!僕の中の名盤の定義って、その時代らしさがあることと、それを普遍的に拡げる事だと思うんで、それは目指しました。でも、それぞれ具体的なモチーフはあるんですよ。ちなみに【おれ達は最高】はモロに般若心経の内容です。僕は信仰がないんですが、般若心経のメッセージにはとても共感できました。「マンハッタン変事」も実際にある「Manhattanhenge」という気象現象を題材にしてます。

ーー「般若心経」って、いったいどこで出会ったんですか?この質問、字面だけ見るとヤバいですね。。。こんな質問することになると思わなかったな(笑)

 

やばくないですよ!インターネット見てたらなんでも有ります。こういう昔から残ってるものって面白いものが多いし、この先も残る確率も高いからモチーフにはしやすいかなと思います。出会いという意味では例えば映画を一本見てもそういうサブジェクトになり得るものって千個くらい映ってると思います。

 

 ーー「般若心経」との出会いの次は、JAZADOCUMENTさんとの出会いについて教えてもらってもいいですか?

 

彼は僕と同じく札幌在住で、お互い活動しているうちに自然と仲間になりました。札幌ってシーンが狭いのでほぼ全員が知り合い同士って感じです。

ーートラックメイカーとしてJAZADOCUMENTさんを選んだ理由は?彼のトラックはどういうところが好きですか?

 

Refugeecampっていうクルーメイトでもあり、仲も良いので自然と1stは全部JAZADOCUMENTでやってみようかなっていう気持ちでした。1stだし名刺代わりという意味でも、地元の人とやるのが良いと思いました。彼のトラックは単純にかっこ良いし好きなんですが、どことなく札幌感が有る気がするんです。都会の音楽の一瞬でテンションを上げるような感じは無いけど、田舎のサンプリング全開のイナタさみたいなのに比べると都会っぽいんですよね。とても札幌っぽいと思います。そして、一周回って現行っぽさもある。絶妙ですよ。

 

ーーJAZADOCUMENTさんとはアルバムのテーマやコンセプトについてディスカッションとかしました?

 

ほとんどしてないですね。ただ1000曲くらいトラックは聴かせてもらったと思います。例えば「こういう歌詞を書くからそれっぽいビートくれ!」っていうと、すごく表現が限定的になっちゃうと思うんです。「なんでこのビートにこの歌詞なんだろう?」っていう違和感があるくらいのほうが面白くなりそうですよね。Jazadocumentには何を書くか敢えてあまり伝えずに「どんどん送ってくれ!」と。彼は本当に優秀なクリエイターです。最近は映像もとても上手い。

 

 ーー札幌感っていう言葉が出たので、聞きたいんですけど、松島君って地元レペゼン的なフィーリングがあんまりしないんですよね。例えば札幌だとTHA BLUE HERBというユニットがいて、彼らは自分たちの地域性を色んなやり方でデリヴァリーしてたじゃないですか。でも松島君はこのアルバムでは、サビでクラシックなフレーズを使い回してる(笑)【東京物語】みたいなやり方で、地元レペゼンに対してどこか斜に構えてる。というかレペゼン感があまりない。このへんについては自分でどう考えてますか。

 

人によって松島めっちゃレペゼンしてるなって感じる人も居ると思います。僕はレペゼンの仕方がオシャレなんです。つまりオシャレペゼンですね。普通のレペゼンでも例えば同年代のラッパーで北海道外に向けて一番札幌を意識させてるのは絶対に僕だと思います。札幌市内で「レペゼン札幌」って叫ぶよりも、僕が東京や大阪の舞台にただ立つ事の方が強く対外的な機能としてのレペゼンになっているはずです。内省的なレペゼンとしては、僕は札幌在住だけど、日本人だし地球人だし、人類だし、特定の地域にこだわる必要はないのかなと思います。反面、そう思うのも札幌の地域性かもしれない。札幌が一番というより、日本一の僕が札幌で生まれて住んでいる、というのが美しい気がします。そのためには、まず僕が日本一にならないといけません。ちなみにTHA BLUE HARBには強く影響を受けてて、良きお手本だと思ってます。

 

ーーTHA BLUE HARBからの影響はどういうところにありますか?

 

第一にスタンスですかね。人のせいにしないで自分でどうにかするっていう姿勢とか、一つ一つを丁寧にやって気を抜かないっていう。めっちゃ当たり前のことなんですけど、それがいかに大事かを学びました。というか、一度会うと絶対にファンになってしまいますね。お三方とも歩く人間力みたいな人で、一発で惚れてしまう。

 

マインドとしては、近年、hiphopって何かを敵として歌うものじゃ無くなってきてると思うんですよ。対東京とか、対世間だったり権力とか体制っていう構図ってよりも、自分の人生について歌ったり、明日に対する不安だったり、そういう自分の気分について歌うのが増えましたよね。僕もそうですし、時代の変容だとは思います。

 

 ーー楽曲の制作ってどういうふうにやってるんですか?あと、アルバム作るのにどれくらいかかりました?

 

パソコンで歌詞を書いてマイクで録音するだけですね。僕はそれしかやってないです。僕の作業は一ヶ月くらいですね。そういうと早い気がしますけど、普段一日で10曲くらい作れるんで、単純計算で通常の30倍くらい時間かかりました!そのあとミックスしてもらってマスタリングしてもらってアートワーク作ってもらってなんでトータルで二ヶ月ちょいって感じですね。

 

 

ーー松島くんのラッパー歴を考えると、デビュー作が出るまで時間がかかってると言えますよね。【努力しない】では、「アルバムめんどくさい」とラップしてますし(笑)

 

誰かちょっと失念したんですが、有名なロック歌手の人が「1stで売れないと駄目」って言ってて、それが妙に腑に落ちたんです。だけどキャリアの集大成的な1stを出すのは絶対に嫌で、それを出した後どうするんだとも思うし。なので、自然と日常生活の中でちゃんとアルバムを作れないといけない。そのバランスがようやく整ってきたかなと。何年も前に出してても絶対無視されてたし。

 

 

ーー僕が一番好きな歌詞は【ビッグちんちん】なんですよ。「こんな世の中じゃ真面目に歌詞 書いてバースを蹴るなんてよりも でっかいちんちんで建物を破壊 する方が盛り上がるだろう」っていうラインは、シリアスな現状認識をそのままリプリゼントせず、ブラックなユーモアで包んでて、松島君と言うラッパーの本質がむき出しになってると思うんですけど、自分ではこの曲の歌詞をどう捉えてますか?

 

僕の中ではモロ現代アート批判です。例えば、僕が作ったゴミを有名で権威のある展覧会に紛れさせて置いておいても、きっと皆すげー批評したり、下手したら感動するんじゃないの?って思ってて。作品に対して「これはこう感じないといけない」っていう空気も感じます。それもそれで楽しいし悪いとは言わないですが、本来のアートと違ってきてる感じがします。「リズムがゼロ」とか「ブラックボックス」とか明確なモチーフも実は有るんですが、あんまり自分で説明しちゃうとまさに僕が批判しているようなアートになっちゃうので続きはライヴとかで言うことにします。色々ありますが僕はアートが世界を変えると信じているし、アートで世界を変えたいと思ってます。せっかく音楽やってるんだし世界平和くらいは目指さなくちゃ。自分がやってる事が音楽だとかアートだって言い切れる自信はあんまりないですが。

ーー【バックボーン】~【いまの君へ】っていう流れは美しいですよね。【バックボーン】で松島君自身の生い立ちは特にスリルもドラマもないんだとラップした後に、【いまの君へ】で「人生はまるで映画」なんだと。一度ここまで聴くと、アルバム全体に物語の流れがちゃんとあることがわかりますよね。

 

 そう仰ってもらえると本当に嬉しいです。僕は突然友達が鉄砲で撃たれて死んだりは絶対にしない人生ですが、鉄砲で友達を撃つこと自体は僕にも可能なんですよね。敢えてこういう言い方をしますが、「一般の方々」は自分で鉄砲で友達を撃てることを知らず、まるでお客さんみたく生きている人が多いと思います。鉄砲で友達を撃つことが出来るけど、それを選択してないんだっていう認識を持つだけで物語は面白くなるはずです。

 

 

ーーこの作品ってCDリリースじゃないですか。松島くんは別に配信で出すという選択をしても良かったと思うんですけど、それを選ばなかったのはどうしてでしょうか。

 

完全に時代錯誤ですが、やっぱり僕くらいの世代だと自分のCDがお店に並ぶのが夢っていうのはありますね。デビュー盤ですし。祖父母に「スポティファイ限定でだしたよ!」って言っても絶対意味分からないし。そういう意味ではまだまだCDの時代だとも言えるのかもしれませんね。そして、実物を手に取ってもらえる喜びも違います。一昨年RefugeecampでCDをリリースしたのも大きいです。物としてのかっこよさってデータと全然違います。手触りとか味とかフィジカルにしかないですからね。味は確かめなくて良いですが、全てのCDが別々の物体だし、もっと言うと一旦僕の自宅の空気に触れて、それが買ってくれた人の家の空気に触れる。ロマンがある。

 

​ーーフィジカルなものへの思い入れがあると。札幌周辺で気に入ってる個人CDショップやレコ屋さんってあります?

 

札幌の隣町の江別っていうところにあるBIG BOY TOYZっていうお店さんにはとても良くしてもらってます。あとKING KONG札幌店が最近復活して、まだ行けてないんですが気概を感じますね。タワレコの札幌PIVOT店もとても良くしてくれてます。

 

 

​ーー最新の日本語ラップなんかも追ってますか?

 

日本語ラップの話題作はなるべく聴く様にしてます。好きで追うっていうよりも、把握しとかないとって言う感じですね。資料的に聴く感じになっちゃってて、感動することは殆どないですね。リスナーとして好きだと思えたのは去年だとミンちゃんさんの『たぶん絶対』とかですかね。リスナーとして気に入る作品は、年に数枚あるかないかです。でも好きだと思って聞き込むとラップが似てしまうので、好きだと思ったものほどあんまり聴かないようにしてます。ハリネズミみたいですね。悲しい話だ(笑)

ーー最後に、今後の予定を教えてください。

ワンマンライブをやろうと思ってます!あとは、なるべく早く2ndアルバムを出したいと思ってます。元気なうちにたくさんラップをしたいです!

interviewer:

 

八木 皓平

 

音楽とその周辺について書いています。執筆媒体は『Mikiki』『ototoy』『The Sign Magazine』『i-D Japan』『ユリイカ』等々。プロレスラー八木哲大の兄。連絡先は上記メールアドレスかDMになっております。お気軽にご連絡ください。

Gmail: lovesydbarrett80@gmail.com

Twitter: lovesydbarrett

例えば叫ぶ時はOG Macoですとか。

 text by 八木皓平